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自作解説「うねる青、駆ける緑」

  • Sumio Kobayashi
  • 4月29日
  • 読了時間: 3分

自作品で、おそらくこの作品が芸術音楽の作曲家としての最初の作品。


2009年に作曲、当時27歳だったはず?当時は言語学を大学院で学んでいて、言語学と作曲の両立に限界を感じていた時期。日本音楽コンクールのファイナリストになれなかったら、作曲を辞めようと決めての作曲でした。不眠不休で3ヶ月で書いた作品、睡眠も気絶なのか寝ているのかよくわからなかったものです。


---以下プログラムノート---


この曲では自然界の音楽的な響きが楽曲として描写されている。このようにアナログな題材を楽譜や音楽といったデジタルなものにするために理論的な枠組みを用いた。文法的なファクターとして、音楽をまとめる単位やつながりを組み立てるために、まず音楽をゲシュタルト心理学的に考え直した。そして、楽式構造、縦の響き、旋律、これらのつながりを聴衆が認知できるように、まとまった単位として構成し、なるべく多くの調和を生み出そうとしている。こういった論理に基づき、多くの文化で音楽として認識されている、鳥の囀りやクジラの歌声を素材として用いている。特に両者の共通項が重要視されており、その共通項によって水を中心とする自然のイメージを音に投影した。このような論理的な枠組みによってこの曲は作られているが、曲の細部や枠組みも含め、感性や叙情性を重要視して作曲されている。


---ここまでプログラムノート---


当時考えていた「むつかしいこと」を詰め込んだような作品。単純に言ってしまうと「ミュージック・コンクレート」として完成させつつ、その後それを楽譜化していったということになります。


「デジタル」というのが文節化されている、とでも言うか、つまりは音符と言うのは、厳密には小数点以下が無限につづく音の長さやピッチを簡略化して、切り取って示しているもので、その特性を考えながら作ったということになります。たとえば気温というのは実際は22.938482983746271094649023......という温度が現実のものであり、それを天気予報などでは23度、と簡略化している。楽譜上の音の長さもピッチもそういったもので、実際の情報(アナログ)をデジタルに切り取って表している。そのデジタル化を考え直して作品にするというのが一つの核となってました。


この作品では鳥の囀りと鯨の声をミュージックコンクレート的に作り、その後音符にしていっています。これだけだとメシアンの二番煎じになるので、あくまでもミュージックコンクレート的に作ることと、当時のIRCAMのソフトを使って、鳥や鯨の倍音の表現も加えています。


当時は調性的な要素があると、それだけで低評価にされる可能性を感じていたのでぼかしていますが、実際は調性が文法的な要素として使われています。結局倍音列が属7的に響くので、その結果として調性的な響きにある程度はなるとえばそうですが。


考え方は良かったかも知れないものの、この路線の作曲の将来性に疑問を感じ、この作風で書いた作品は2つ程度しかなかったです。


メシアンをはじめとして多くの作曲家が鳥の囀りなどを曲に取り入れているものの結局、人間の音楽と自然界の音のミスマッチを埋めることが自分には出来ませんでした。


今もしこの方向で曲を書くとしたら、あれを用いて、電子ピアノで鳥の囀りを、完全に近い形で、倍音も含めて、再現するという曲にすると思います。


ゲシュタルト心理学、というのは、1フレーズを1フレーズと捉えられるぎりぎりの途切れ具合、長さにして、メロディーを安っぽくせず、ぎりぎりメロディーとして成立させる手法として取り入れて、これはかなり長い間使い続けたやり方です。

 
 

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